1月9日、日本のバスケットボール界の毎年の新春恒例大会となっている全日本総合選手権大会(オールジャパン)が、男子決勝での千葉ジェッツの初優勝で幕を閉じた。
球団創設から6年目。ジェッツの天皇杯獲得は、栃木ブレックスやシーホース三河、そして決勝では川崎ブレイブサンダースといった優勝候補を破って「まさか」のものだったが、司令塔の富樫勇樹の活躍なくして成し遂げられなかったものだろう。
アメリカの高校を卒業し、2014年にはダラス・マーベリックスの一員としてNBAサマーリーグでプレイ。その後はNBAディベロップメントリーグのテキサス・レジェンズでもプレイするなどNBAに近い存在として日本では人気選手の一人である富樫だが、プロとなってからは今回が初めての優勝体験となった。
「プロになって初めての優勝で、言葉にならないくらい嬉しい」。
優勝直後には笑顔でそう語ったが、思ったようなプレイができないときにはベンチの椅子に拳を打ち付けるなど、大会期間中はチームの司令塔として人一倍の責任感を感じて戦っていたこともうかがえた。
2014年7月、ダラス・マーベリックスでNBAサマーリーグに出場した富樫
オールジャパンは負ければその場で敗退という、通常のシーズンとはまた違う緊張感のある大会だが、富樫は持ち味である巧みなドリブルワークとアシストでチームを牽引すると同時に、自らのドライブインや3ポイントショットで得点面でも活躍し、躍動した。88-66と圧倒的な勝利を収めた決勝戦では、4本の3Pを決めるなどで20得点をあげた。
オールジャパン全体の3位となる平均16.5得点、同1位の4.5アシスト、3P成功率は同4位の37.5%だった。チームメイトのタイラー・ストーンとキャプテン・小野龍猛とともに大会のベストファイブにも選出された。
「富樫はこれくらいできると思っている」。
準決勝の三河戦で21点、6アシスト、8リバウンドと167cmの小兵ポイントガードの八面六臂の働きについて問われたジェッツの大野篤史ヘッドコーチはそう話している。NBAへの挑戦を見据えながら、昨季はシーズン直前にジェッツ入りが決まり、プレイタイムもなかなか得られないなど難しい状況に置かれてきた富樫だが、本来はこれくらいの活躍を見せてもまったく不思議ではないということだ。
キャリアを重ねることで、当然経験値も増している。富樫は、NBAサマーリーグでプレイしたときには「ものすごく緊張していた」が、今回のオールジャパンでは「そういうのはなかった」と落ち着いて、のびのびと自分らしいパフォーマンスができたと振り返った。
ジェッツはBリーグで現在19勝10敗で東地区の3位だが、11月初頭から12月半ばにかけて13連勝をマークするなど調子は上向いている。
強豪を打ち倒しての今回のオールジャパン優勝で、ジェッツがシーズン後半に勢いをつけ、その先のプレイオフでも勝ち上がっていく可能性は大いにある。 言わずもがなながら、富樫の活躍がそれを左右する。
文:永塚和志(ジャパンタイムズ) Twitter: @kaznagatsuka