日本時間12月22日(日)、世界ヘビー級3団体統一王者のオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)は、リング上でデジャブーを味わうことができるのだろうか。
ウシクは今年5月にタイソン・フューリー(イギリス)を相手に12ラウンドの死闘を戦い抜き、判定勝利を収めたのと同じ会場、サウジアラビア・リヤドのキングダムアリーナで勝利の再現を目論んでいる。この試合はスポーツ専門の動画配信サービス『DAZN(ダゾーン)』でPPVライブ配信される。
これほどまでに多くの偉業を達成してきた無敗の王者ウシクが、プロとしてリングに上がった回数がまだ22回しかないというのは信じがたい事実だ。
クルーザー級とヘビー級の2階級でアンディスピューテッド・チャンピオンに輝き、現在世界最強のパウンド・フォー・パウンド・ファイターでもあるウシクは、殿堂入りを確実視される存在であり、多くの人々にとって史上最高のファイターと考えられるボクサーである。
この試合でフューリーから2度目の勝利を収めることができれば、37歳のサウスポーはこの世代最高のヘビー級選手として認められることになるだろう。
フューリー相手に勝利を収めたウシクは、これまでにアンソニー・ジョシュア(イギリス)を2度退けており、現IBF世界ヘビー級チャンピオンのダニエル・デュボア(イギリス)にも(ローブロー偽装疑惑はあったが)9回TKO勝利を収めている。今回の試合でウシクが「ジプシー・キング」とのライバル関係に幕を下せば、もはや彼のヘビー級での地位は揺るがしようがないだろう。
キャリアの終焉が近づいているとはいえ、ウシクに衰えの色は見えず、フューリーとの再戦後も彼にはまだ大きな試合の可能性が控えている。
ここでは、名門『The Ring』誌(リングマガジン)の元編集人で、現本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイが、フューリー戦後に期待されるウシクの2025年の対戦相手を予測する。
ウシクvsフューリー3はある?
ウシクvsフューリーの『トリロジー』(3部作対決、いわゆるラバーマッチ)が見られる唯一の可能性は、今回の試合でウシクがフューリーに敗れた場合のみだろう。ウシクから見れば、来年の対戦相手候補の中でも最下位と言える。
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ヘビー級ボクシングの伝統を彩ってきた偉大な『トリロジー』は、歴史的に重要な意味を持つだけでなく、興行的にも非常に魅力的である。しかし、ウシクとしては2024年のうちにフューリーを片付け、その計画を過去のものとして葬り去りたいと考えているに違いない。
一方、フューリーは宿敵との3度目の対戦実現に全力を傾けている。
「再戦は必ず実現する。『トリロジー』だ。絶対だ」と、英紙『デイリーメール』に掲載された『DAZN Face Off』の中でフューリーはそう語った。
「彼が1勝、私が1勝となれば、自分が優れているとは言えないし、彼も自分が上だとは言えない。3度目の対戦が必ずあるべきだ」
ウシクとダニエル・デュボアとの再戦は?
2023年8月26日、ウシクはポーランドでダニエル・デュボアを9回TKOで下し、IBF/WBA/WBOの3団体のタイトルを防衛した。この結果は素晴らしいものだったが、試合後には論争の的となる大きな出来事が起こった。
第5ラウンド、デュボアが強烈な右ボディブローを放ち、ウシクはたまらず膝をついた。すると、レフェリーは即座にローブローを宣告し、王者に4分近いリカバリーの時間を与えた。ウシクはそこから持ち直してTKOで勝利したものの、翌日の見出しでスポットライトを浴びたのはこの裁定だった。
このパンチに対するボクシング関係者の意見は二分された。デュボアのパンチは正当だったと主張する意見もあれば、ベテランレフェリーであるルイス・パボン氏の裁定に同意を示す者もいた。
この出来事を考えれば、もし再戦が実現すれば注目されるビッグマッチとなることは間違いないが、加えて、この試合後のデュボアの評価も急激に上昇している。
デュボアは今年6月にフィリップ・フルゴビッチ(クロアチア)に勝利し、IBF世界ヘビー級の正規王者に昇格すると、9月にはアンソニー・ジョシュア相手に5ラウンドで衝撃的なノックアウト勝ちを収めている。
「ダニエルにはウシクと再び対戦してほしい。なぜなら、あの試合は彼が勝つべきだったし、今でもローブローではなかったと信じているからだ」とプロモーターのフランク・ウォーレン氏は英紙『The Standard』に語った。
ただし、ウシクvsデュボアの再戦が現実のものとなる前に、デュボアは重大な試練を乗り越えなければならない一戦が控えている。デュボアは2025年2月20日に元WBO世界ヘビー級王者のジョセフ・パーカー(ニュージーランド)と対戦する予定となっている。
ウシクのクルーザー級復帰は?
前回のフューリー戦での勝利後、ウシクはクルーザー級復帰の意思を表明し、ファンやボクシングの専門家を驚かせた。
「おそらく再戦の後には、クルーザー級に階級を下げるつもりだ。クルーザー級でさらに試合をしたい」とウシクはポッドキャスト番組「The 3 Knockdown Rule」でそう語った。
「クルーザー級で2度目のアンディスピューテッド ・チャンピオンになれるかもしれない。それが私のプランだ。(ヘビー級として)トレーニングキャンプの準備を始めると、(体重を増やすため)常に食べ続けなければならない。私にとっては辛いことだし、好きではないんだ」
2016年9月から2018年7月にかけて、ウシクはクルーザー級のすべての正規世界タイトルを獲得し、1980年代のイベンダー・ホリフィールド以来、同階級で初のアンディスピューテッド・チャンピオンとなった。しかも、ウシクは全てのチャンピオン(クリストフ・グロワッキー、マイリス・ブリーディス、ムラト・ガシエフ)に敵地で勝利してみせた。
これまでのボクシング史上、クルーザー級チャンピオンからヘビー級に転向し、世界タイトルを獲得した後、クルーザー級に戻って再びタイトルを奪還したボクサーは一人もいない。
文:Who will Oleksandr Usyk fight next? Potential plans for pound-for-pound king in 2025
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版)
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