渡邊雄太がラプターズにもたらす「努力」以上の貢献

Carlan Gay

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渡邊雄太はハッスル以上のことをしているのか?

渡邊雄太は、トロント・ラプターズの試合に出場するたびにエナジー全開でプレイしているが、彼はハッスル以上のことをしているのだろうか?

渡邊がトロント・ラプターズにもたらすものが何なのかはまだわからないことが多いが、ひとつだけ確かなことがある。それは、彼が毎試合、最大限の努力をしている、ということだ。

だから、ヤフースポーツ・カナダのウィリアム・ルー記者が、1月24日(日本時間1月25日)にラプターズが107-102でインディアナ・ペイサーズに勝利したあと、疲れているかどうか渡邊に尋ねたときの彼の答えは、この上ないほどリアルだった。

「本音を言えば疲れています」と渡邊は言った。

「体調はいいと思います。今日は20分くらいプレイしたと思いますが、そうですね、今はすごく疲れています」。

渡邊はこの日、ラプターズとして今季最多となる21分間の出場を果たした。彼の得点はたった3点(フィールドゴール7本中1本成功)だったが、ディフェンスでは6リバウンド、2ブロックを記録した。数字だけを見ると、特にNBAのレベルでは、それはとりわけ賞賛に値するものではないが、時に数字以上に大事なものがある。

カイル・ラウリーとパスカル・シアカムをともに怪我で欠いていたことで、渡邊は通常ではありえない、追加の出場時間を得た。彼のような2ウェイ契約の選手にとって、こういう機会は非常にまれだと言える。しかし、渡邊のすごいところは、コートに一歩足を踏み入れたら、チームのために体力を使い切るまで自分の全てを出し切る点だ。

渡邊は、これがNBAのフルタイムのロスターに割り込む最後のチャンスかもしれないと理解しているようだ。現実にはそうなるかもしれない。渡邊は、契約可能な2ウェイ契約の最終年を迎えている。2ウェイ契約を結べるのは、NBAでの経験が3年以下の選手のみで、NBA歴3年目に入った渡邉にとっては、これを逃したらあとがないのだ。

パンデミックによる不安定な状況のため、2020-21シーズンは、チームが2ウェイ契約選手を最大50試合まで保持できるようになった。通常は、2ウェイ契約選手のNBAチームへの帯同期間は45日までだ。通常の状況だったら、渡邉の帯同期間は早ければ2月で終わってしまうはずだった。その代わりに今シーズンは、彼はラプターズの7割近い試合に帯同し、自分はNBAにいるべき選手だと証明することができる。

問題は、彼の居場所が本当にNBAなのかだ。もしそうだとしたら、トロントは彼のスキルセットから恩恵を受けることができるのか? その答えを出すのは正直に言って早すぎるが、ここでは、知識に基づいた推測をする上で必要な情報を見ていこう。

数字が示す渡邊雄太の貢献

何よりもまず、ラプターズは、渡邊が試合に出場しているときのほうが若干良いチームである。

渡邊が出場中のラプターズは100ポゼッションあたり103.1失点に相手を抑えているが、彼が試合に出ていない間は、100ポゼッションあたり110.1失点を喫している。渡邊の出場時間は、ガベージタイムや控え選手が主な相手の場合もあるが、通常のローテーションプレイヤーとプレイするときにはうまくいっている。

渡邊は出場時間のほとんどを、フレッド・バンブリート、シアカム、ノーマン・パウエル、クリス・ブーシェイとプレイしていて、NBA Statsによるとその5人のラインナップのネットレーティング(100ポゼッションあたりの平均得失点差)は+47.8である。

渡邊が、『ラウリーとベンチ』と呼ばれるパウエル、ブーシェイ、ラウリー、スタンリー・ジョンソンとともに出場しているときは、彼らのネットレーティングは+38.6だ。これもシーズン序盤の数少ないサンプルだが、それでもこの数字は心強い。

トロントは現在、リーグで最悪のディフェンシブリバウンドを記録しているチームのひとつでもある。NBA Statsによれば、ラプターズは1試合平均ディフェンシブリバウンド数が33.1(リーグで下から4番目)で、ディフェンシブリバウンド率は71.8%(リーグ25位)だ。

渡邊のディフェンシブリバウンド率は21.8%で、アーロン・ベインズの20.9%とブーシェイの17.8%を上回ってチーム首位の数字を誇り、チームにおいてより信頼できるディフェンスリバウンダーのひとりになっている。

エナジーはスタッツではないが、レギュラーシーズンの試合を見ていると画面を通して現れるものだ。渡邊は、短い出場時間に全力を投入してそのエナジーを提供し続けているが、一定の数字からもまた、彼がチームにポジティブな効果をもたらしていることがわかる。

それに加えて、彼には周りが思っている以上にスキルがあるのも事実だ。身体が大きいわりに良く動き、シューティングストロークも良い。そのため、彼がコートにいるとラプターズのスペーシングも良くなるのだ。

ローテーションのレギュラー枠を獲得するのに、それで十分なのだろうか? いずれそれはわかることだろう。いずれにせよ、もし渡邊が2ウェイ契約から本契約を獲得することができなかったとしても、それは彼の努力が足りないからではないことだけは確かだ。

※スタッツは現地1月27日時点のもの。

原文:Yuta Watanabe: Is the Toronto Raptors forward bringing more than just effort to the table? by Carlan Gay/NBA Canada(2021年1月28日掲載)
翻訳:YOKO B Twitter:@yoko_okc


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