日本時間3月2日(日)にバークレイズ・センターで行われた試合で、ジャーボンテイ(ジェルボンタ、ガーボンタ)・デイビスは予想されたようにラモント(ラモン、レイモント)・ローチをノックアウトすることはできなかった。 それどころか、WBA世界ライト級チャンピオンのタイトルマッチは物議を醸す結果となった。
『タンク』デイビス(30勝1分)は第9ラウンド、片膝をついたように見えたところで、コーナーに寄ると目頭を拭った。レフェリーはその行為に対し、ノックダウンもデイビスの失格も宣言しなかった。ローチ(25勝1分2敗)との試合はそのまま続けられ、結果は大方の予想に反して引き分けとなった。
プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)に所属するデイビスは、トゥルキ・アラルシク(アルシェイク)氏と提携しているマッチルーム・ボクシングやトップランクといったプロモーターとは試合をしてこなかった。
また、2023年にライアン・ガルシアをKOに沈めて『ボクシングの顔』となって以来、デイビスは今回ローチと対戦するまでにフランク・マーティン戦(勝利)しか行ってこなかった。その間、彼は轢き逃げ事件に起因する交通違反で有罪を認めた後、自宅謹慎を命じられ、2023年に身柄を拘束された。
そんな『タンク』には2025年の目標がある。それは「現役でいること」だ。
「今年は少しでも多くリングに立ちたい。できれば3試合。まずはローチと試合をして、そこから残りの試合をどうするか考える」とデイビスは語った。
ローチ戦が物議を醸す形となったが、デイビスが今年3試合するとした場合、次の対戦相手は誰になるか? ここではデイビスと対戦する可能性が高い候補者をリストアップしていく。
ライト級のKOマシーン、ジャーボンテイ・デイビスの次の対戦相手
ジャーボンテイ・デイビスvsラモント・ローチ
物議を醸した初戦の後では、順当なチョイスと考えられるのはラモント・ローチの再戦(ダイレクトリマッチ)だろう。
デイビスは明らかに膝をついたところで、ローチはデイビスを倒し、2階級制覇を達成したと主張する権利を有したはずだった。しかし、そのダウンは幻となり、まさかのドローとなった。
『CompuBox』のスタッツデータによると、ヒット率ではデイビスが上回った。デイビスは279発中103発(37%)を命中させ、一方のローチは400発中112発(28%)を命中させた。パワーパンチに至ってはデイビスは44%で、ローチのヒット率は35%だ。だが、試合を通してローチの方が手数で上回っていたのも確かだ。
批判的論調もあってか、デイビスは再戦に応じるつもりだと語っており、そうなれば会場はニューヨークになるだろう。ローチはWBA世界スーパーフェザー級チャンピオンであるため、今後は同級の指名挑戦者との試合もこなさなければならない。しかし、すべてが問題なくスムーズに運べば、再戦は年内に行われる可能性がある。
ジャーボンテイ・デイビスvsシャクール・スティーブンソン
ボクシング界の中では、デイビスと同階級で戦うシャクール・スティーブンソンとデイビスの試合に関心を示している者は多い。
WBC世界ライト級チャンピオンのスティーブンソン(23勝0敗)は、複数の階級で試合をこなしてきた。最近では、体調を崩したフロイド・スコフィールドの代役として、元電気技師のジョシュ・パドリーとリヤドで戦い、勝利を収めたばかりだ。
両者のボクシング・スタイルは異なり、KOパンチャーの『タンク』に対して、スティーブンソンはどちらかというとディフェンシブなボクサーである。しかし、スティーブンソンは自身のスキルがデイビスのパワーを上回ると考えている。
「奴はどうやってオレを殴る? どうやってオレにパンチを当てる? ジャーボンテイ・デイビスの試合をどれだけ見てきたと思う? 奴とはリングで戦ったこともあるし、 多くのことを知っている。 早く実現しないかと待ちきれない」と、スティーブンソンは米スポーツ誌『スポーツ・イラストレイテッド』で語っている。
スティーブンソンとの試合を実現させるために、エディ・ハーン氏とマッチルーム・ボクシングはデイビス陣営と交渉しなければならない。実現すれば、ボクシング界で最も期待される試合の1つとなるだろう。
ジャーボンテイ・デイビスvsキーショーン・デイビス
『タンク』が今の階級にとどまるのならば、「もう1人のデイビス」、WBOの新チャンピオン、キーショーン・デイビスとの対戦も候補に上げられるだろう。
キーショーン(13勝0敗)はデニス・ベリンチクをノックアウトしてWBO世界王座を獲得したばかりだ。2021年オリンピック銀メダリストのキーショーンは、ベリンチクと対戦する前後にもジャーボンテイ・デイビスを挑発するなど、歯に衣を着せぬファイターである。
「オレは『タンク』とやりたいね」と、『スポーツ・イラストレイテッド』誌経由で『Fight Hub TV』のインタビューに対して、キーショーンは語った。
「でも奴にはオレと戦う度胸はないだろう。本当にそう感じるんだ...奴には俺と契約して戦う度胸があるとは本当に思えない」
『ザ・ビジネスマン』の異名を持つキーショーンはジャーボンテイ・デービスの動向を注視しているが、追いかけはしない。彼はただ自分のキャリアがどうなっていくかを見続けたいと思っている。
「オレは『タンク』を追いかけていない。そこははっきりさせておこう」と、ボクシング専門メディア『Seconds Out』の記事内で著名記者アリエル・ヘルワニ氏に語った。
「タンクなんてクソ食らえだ! タンクも、彼のコーチも、ボクシング界も皆、オレがタンクと戦いたいと思っているのは知っている。問題はタンクに俺と戦う度胸があるかどうかだ」
こうした発言に対してジャーボンテイは、互いに試合を行わないキーショーンとスティーブンソンを非難している。ライト級の頂点に立つ『タンク』がキーショーンに対して示した関心はそれくらいだ。
ジャーボンテイ・デイビスvs井上尚弥
『タンク』デイビスが持つ選択肢の中で、ファンやメディアが最も期待しているのは、スーパーバンタム級のアンディスピューテッド・チャンピオン井上尚弥との対戦だろう。この2人が対戦が魅力的なのは、両者ともに対戦相手を圧倒するダイナミックなファイターであるからだ。
ただ、いくつかの要因を考慮すると、この試合の実現可能性は低いと思わざるを得ない。
4階級を制覇してきた井上(29勝0敗)は、この1月にキム・イェジュンに勝利したばかりである。そしてこの先も、バンタム級世界チャンピオンの中谷潤人やスーパーバンタム級トップコンテンダーのムロジョン・アフマダリエフ、あるいは同階級の他の選手など多くの対戦相手の噂がある。またデイビスと対戦するには、井上は数階級ウェイトを上げなければならないこともある。
リヤドシーズンをハンドリングするトゥルキ・アラルシク氏は、「(井上は)彼(タンク)と対戦することはないだろう」とソーシャルメディアに投稿していた。また最近もデイビスは、『Seconds Out』のソーシャルメディアに「相手が誰だろうと、みんながリングで見たいと思う唯一のファイターは自分だ。体重は関係ない」と投稿したのち、削除していた。
今のところ、この対戦はこれまでと変わらず夢物語の域を出ていない。
ジャーボンテイ・デイビスvsワシル・ロマチェンコ
デイビスが元ライト級王者で現IBF王者のワシル・ロマチェンコと対戦すると発言したのは、それほど前のことではない。2つの団体の王座を統一するこの試合は最も理にかなった対戦だった。
しかしながら、この対戦も井上戦同様、今では実現の可能性は低い。
交渉が決裂するまでは、2024年にこの試合が実現する可能性が非常に高かった。だが、米ケーブル局『ESPN』の報道によると、ロマチェンコ(18勝3敗)が2024年内の試合をすべてキャンセルしたいと希望したため、実現には至らなかった経緯がある。
「ロマは今、そんなムードにはない。今はモチベーションがないんだ」と、ロマチェンコのマネージャー、エギス・クリマス氏は『ESPN』の記事の中でレポーターのスティーブ・キム氏に語っている。
「彼はオフを取っている。家族と過ごす時間をもっと持ちたいと考えている...ロマにとってのモチベーションは金銭だけではない」
37歳のウクライナ人ボクサーは、昨年5月にジョージ・カンボソスJr.を破り、IBFタイトルを獲得した。だが、その後は防衛戦を行っておらず、復帰の兆しも見せていない。IBFはロマチェンコに対し、レイモンド・ムラタラとザウル・アブドゥラエフの間で予定されている暫定戦の勝者と対戦しなければならないという最後通牒を出している。
仮にロマチェンコが試合を行い、ムラタラvsアブドゥラエフの勝者と対戦することになっても、2025年のデイビス戦は実現の可能性が低いように感じられる。
原文:Gervonta Davis next fight: Naoya Inoue, Lamont Roach rematch and other possible bouts following Roach fight
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)
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