フォトグラファーの安井麻実氏が、NBA 2021-22シーズンに現地で取材したゲームを自ら撮影した写真とともに振り返る。今回は、渡邊雄太選手が所属するトロント・ラプターズの本拠地スコシアバンク・アリーナやそこで働く人々の様子をお届けする。
例年よりも暖かいという今年のトロント。それでも確かに、秋のひんやりした風を感じる10月末に、私は今回のNBA取材で初めてトロント・ラプターズのホームアリーナであるスコシアバンク・アリーナを訪れました。
スコシアバンク・アリーナは、トロントの主要駅であるUnion駅から徒歩2分ほど(※出口にもよる)。駅の真横という好立地で、ダウンタウンの中にあるためとてもアクセスしやすいと言えます。
スコシアバンク・アリーナにおける新型コロナウイルス対策と入場条件は、こちらのページで確認することができます。
ここに書かれている内容によれば、12歳以上の入場者は”完全なワクチン接種が完了していないと入場できない”とあります。この”完全なワクチン接種”というのは、カナダの保健省によるガイダンスがいくつかあり、主に 『カナダ政府が承認しているワクチンを2回接種してから、14日以上経過していること』を指します。
ファンはもちろん、アリーナで働くスタッフ、そしてメディアも、ワクチン未接種者は入場できません。これは、チームや選手、そして来場者とスタッフの安全を確保し、感染拡大の防止に努めるということと、11歳以下の子供たちを守るという2つの意味を併せ持っています。
これはラプターズの試合に限ったことではなく、スコシアバンク・アリーナで行われる全てのイベントに対して同じ条件が課されているようです。
それではいよいよ、中に入りましょう!
スコシアバンク・アリーナの収容人数はおよそ1万9800人。大型ビジョンには “WE BACK” (私たちは戻ってきた)の文字が。
昨シーズン、フロリダ州タンパのアマリー・アリーナを代替本拠地としていたラプターズは、新型コロナウイルスの影響を受け、観客数をおよそ5分の1程度まで抑えて開催していたものの、2021年1月からは無観客での開催期間も。今シーズンは先にも書いたように”完全なワクチン接種完了者”を入場可能とし、全ての座席を販売しています。
アリーナ内ではマスク着用が呼びかけられ、アルコール類も販売しています。アリーナで働くスタッフのNakryさんに、カナダビールを紹介してもらいました。
今回は飲めるタイミンングが無かったので、次回こそ必ず飲みたいと思います!
「お酒を飲みすぎても、応援する時にマスクだけはしてね!」と、会場内のスタッフがマスク着用を呼びかけるボードを持っていました。
試合開始前やハーフタイム中など、要所要所で感染拡大防止の協力を呼びかけるアナウンスが流れ、大型ビジョンにも注意喚起が表示されます。
・常にマスクを着用してください
・飲食は各自の座席で
・手洗いを徹底してください
・フィジカルディスタンスを守ってください
この画面が出た後に、「皆さん、ワクチンを打ってくれてありがとう!」の一言が。ラプターズは、とても丁寧に気を配って感染対策をしている印象です。
私が撮影していたエリアのすぐ横にいて、1ブロックほどのお客さんの案内をしていたNatalieさんにも、すこしお話をうかがいました。
彼女はアリーナ運営をサポートしているMLSEに勤めて12年。たくさんのラプターズファンが彼女との今シーズンの再会を喜び、ハグしていた姿がとても印象に残っています。彼女はアリーナ内を知り尽くしていて、お客さんたちに何か尋ねられるたびに、文字通り”秒で”応えて案内していました。
Natalieさんのようなスタッフが会場中に配置されていて、お客さんの案内はもちろんのこと、スムーズな移動の手助け、そして時には迷惑行為に及ぶ人に注意まで。Natalieさんの気配りは素晴らしく、横にいてとても心強かったのを鮮明に覚えています。
試合が白熱してくると、マスクを外して大声を上げるファンも見かけたものの、基本的には全員がマスクをしていて、注意喚起が徹底されているので、”比較的安心して楽しめるアリーナ”だと感じました。
パンデミックの最中において、このような興行がいかに難しいか身体で感じたところもありますが、カナダ政府・保健省のコントロールの下、このような場所に集える人々は”完全なワクチン接種完了者のみ”、という事実が、さらなる安心感を与えます(スコシアバンク・アリーナでは、陰性証明では入場不可)。
2021-22シーズンのNBAでは各地域の感染状況や運営方針によって対策が異なるようですが、たくさんの人の支えと働きかけによって、お客さんが入れていることは間違いありません。スポーツが人に与える感動と、ラプターズがトロントの人々やカナダを元気にしているという事実が、今シーズンの運営を可能にしているようにも感じます。
パンデミックの最中にあっても柔軟に対応し、お客さん、チーム、スタッフを守るという方針が明確なトロント・ラプターズ。いかがでしたか? 私は、笑顔が溢れるアリーナ内の光景が忘れられません。
次回は、アリーナ内のグルメやグッズをご紹介しようと思います。
著者プロフィール
安井麻実:写真家。バスケットボールに魅了され2009年より日本のプロバスケットボールリーグの撮影に携わる。アスリートの"こころ"を捉える瞬間を撮影すべく、作品制作に情熱を注ぐ。
Twitter : @maminosapuri
Instagram : @mami_yasui