日本人フィーバーに湧くMLB、一方で日本のプロ野球は「空洞化」?|プロ野球2024

菅谷齊

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2024年は日本人メジャーリーガーの当たり年─。大谷翔平にダルビッシュ有に加え、今シーズンから仲間入りした投手たちが大活躍している。その3投手が抜けた日本のチームは苦戦、また苦戦…。

山本去り4連覇に赤信号のオリックス

目も当てられないのがパ・リーグ3連覇を果たし黄金時代を築いたオリックスである。今季は4年連続リーグ優勝を目指してスタートしたが、大エースだった山本由伸がドジャース入りして投手陣にとてつもなく大きな穴が空いてしまった。

開幕以来、ずっとBクラスに沈んだまま。時には最下位に落ちたことも。4月21日から3連勝して貯金2(12勝10敗1分け)とした後、29日から4連敗して借金生活に入り、5月8日から4連敗(1分け含む)という有様。打てず守れずで、これが3連覇した同じチームかと思うほどの弱さなのである。

3年連続“投手三冠王”の山本が抜けた穴は簡単に埋められないと予想されていたが、まさにその通りの状態で苦しんでいる。宮城大弥に山本の代わり、と目論んだけれども、ソフトバンクとの開幕戦で敗戦投手になったことが響いてか、今季初勝利は開幕から17日後の4月13日の日本ハム戦だった。5月半ばには4敗する始末だった。

開幕戦に勝ったソフトバンクは4月中旬に7連勝を記録するなど絶好調で「独走態勢」の状況である。10ゲーム差ほどを付けられているオリックスの4連覇はほぼ絶望的といっていいだろう。

失った山本はといえば、12年460億円の大型契約を結び、大谷とのコンビで勝ち続け、まさに笑いの止まらない日々を送っている。昨年は主軸打者の吉田正尚がレッドソックスへ。投打の柱がいなくなったのだから勝てなくなるのは当然である。

今永がいれば優勝候補だったDeNA

そのメジャーリーグで山本、いや大谷以上に注目を集めているのがカブスの今永昇太である。打たれない、負けない─でエースの座を奪った。

「今永がいたらなあ」と悔しがっているのがDeNA。つまり優勝を十分狙えるからである。

勝率5割近辺を行ったり来たりで、なんとも心もとない戦いをしている。調子に乗りかけたと思ったら4月13日から5連敗で借金3に。5月に入って5割にあと1勝としたのに3連敗という頼りなさ。エースとなった東克樹に頼り切っている。しかし、後続がいないから簡単に連敗する。

アメリカでの挑戦を終えた筒香嘉智を急きょ戦力に迎えたが、打者一人でなんとかなる状態になっていない。つまり今永の穴を埋められないということである。

今永は4年77億円で入団。子熊のマークがついたユニホームがよく似合う。話す内容も“投げる哲学者”の異名通りメディアをうならせている。

松井が消え最下位候補の楽天

5月21日、衝撃的な負けスコアがあった。ソフトバンク21-0楽天である。

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1イニング7点でも珍しいのに10点というのもあった。前半の5回終了時点で21失点という楽天だった。4万余人の観客は滅多にお目にかかれない一戦を目撃したことになる。

この楽天、今シーズンからクローザーの松井裕樹が海を渡り、ダルビッシュのいるパドレスに移籍した。5年40億円の契約だった。松井は昨年までの2シーズンは32セーブ、39セーブを挙げ、連続タイトルを獲得した球界を代表するクローザーに成長していた。

楽天にとって松井は優勝戦線に食い込むのに絶対必要な投手だった。それが消え、先発で5年連続三振奪取王だった則本昂大が抑えに回った。当然、先発陣が手薄になる。成績に開幕から響いてBクラスを低迷し、西武と最下位争いをしている。

高給取りがメジャーリーグに行ってチームを去ると人件費が助かるけれども、その代償にシーズンに入って勝てないチームに様変わりしてしまう。オリックス、DeNA、楽天はその象徴となっている。

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菅谷齊

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菅谷齊(すがや・ひとし)1943年、東京・港区生まれ、法大卒。共同通信で巨人、阪神、大リーグなどを担当。1984年ロサンゼルス五輪特派員。スポーツデータ部長、編集委員。野球殿堂選考代表幹事を務め三井ゴールデングラブ賞設立に尽力。大沢啓二理事長時代の社団・法人野球振興会(プロ野球OBクラブ)事務局長。ビジネススクールのマスコミ講師などを歴任。法政二高が甲子園夏春連覇した時の野球部員。同期に元巨人の柴田勲、後輩に日本人初の大リーガー村上雅則ら。現在は共同通信社友、日本記者クラブ会員、東京プロ野球記者OBクラブ会長。著書「日本プロ野球の歴史」(大修館、B5版、410ページ)が2023年度ミズノスポーツライター優秀賞を受賞。