TSNが選ぶNBA最優秀ヘッドコーチはケニー・アトキンソン

Stephen Noh

小野春稀 Haruki Ono

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5年前、ケニー・アトキンソンはブルックリン・ネッツヘッドコーチを解雇された。彼は、ネッツの若いロスターでかなりの成果を上げていた。しかしネッツはケビン・デュラントとカイリー・アービングを加え、大きな変化を遂げた。彼がスター選手たちをどのようにマネジメントできるのかという疑問はあったが、彼はそれに答えるための機会さえ与えられなかった。

当時は苦い失望を味わったが、彼にとっては最高の出来事のひとつだっただろう。その後ネッツは崩壊し、彼が優れたコーチであったことが示されたからだ。

アトキンソンは翌シーズン、タイ・ルー率いるクリッパーズのアシスタントとして採用され、その年チームはカワイ・レナードとポール・ジョージ時代の唯一のカンファレンスファイナル進出を果たした。次にウォリアーズに移ったアトキンソンは、ステファン・カリーの4つ目のリング獲得を支えた。この夏は、オリンピックで銀メダルを獲得したフランス代表のアシスタントを務めた。

ヘッドコーチに返り咲いたクリーブランドでも、その成功の連鎖は続いている。昨シーズンのキャブスはイースト4位。今年は5位と予想されていた。それどころか、彼らはイースタンカンファレンスを支配している。

アトキンソンは、前年とほとんど同じ選手を起用し、キャブスを絶対的な強豪に押し上げた。彼のコーチングは、注目と称賛に値する。

NBAでNo.1のオフェンスを構築

昨年のキャブスはリーグ16位と平凡なオフェンスだった。今季は1位で、昨季王者のセルティックスに次ぐ歴代2位だ。アトキンソンが、チームに磨きをかけ、より現代的なバスケを採用することによって、キャブスは大きな注目を集めた。

どのコーチもチームが走ることを望んでいる。問題は選手たちからの信頼だ。アトキンソンは、ネッツ時代から指導してきたどのチームでも、それを得ることができた。昨年はペースで24位に終わったが、今年のキャブスは11位につけている。

アトキンソンはまた、より多くの3Pシュートを打たせている。昨年のキャブスは1試合あたり37本でリーグ8位と多い方ではあった。今年はさらに1試合あたり4本増やし、リーグ4位の3PT試投数となっている。

シュート力の向上には、より個人的な理由もある。アトキンソンはトレード期限でデアンドレ・ハンターという優秀なシューターを得た。彼はまたタイ・ジェロームを見出し、シックスマン・オブ・ザ・イヤーの最有力候補にまで押し上げた。そしてエバン・モブリーにもシュートを打たせている。

戦略上の理由はもっと興味深い。前ヘッドコーチJ.B.ビッカースタッフも昨年のキャブスの3PTを増やしたが、彼はスターガードたちがボールを持つ間、シューターたちを待機させるという戦略を取った。

アトキンソンはオフボールの動きを大幅に取り入れ、ドライブが起きるとと自動的に選手がローテーションするようにした。その結果、ドライブレーンが広がり、ドライブからのショットの質も向上した。

ビッカースタッフの仕事が悪かったというわけではない。ジャレット・アレンとモブレーという2人の才能あるビッグマンと、ドノバン・ミッチェルとダリアス・ガーランドという2人の有能なプレーメーカーは素晴らしいコアであるが、彼らの間には重複する持ち味がたくさんある。

アトキンソンは、4人全員の能力を最大限に引き出すために、これらの選手の出場時間を調整するという見事な仕事をしている。モブリーにピック&ロールをさせることで、2ビッグのラインナップをよりプレーしやすいものにし、クリーブランドの若きスター選手のスキルレベルを大きく飛躍させた。

モブリーだけではない。クリーブランドのロスターにいるすべての選手が成長し、それはアトキンソンが彼らが成功するために可能な限り最高の起用法を編み出したからだ。

Kenny Atkinson

エリートディフェンスを継続

キャブスはアトキンソンが来る前からディフェンスに優れたチームで、昨季はリーグ7位だった。今季彼らはより優れたディフェンスをしたが、順位は8位に下がった。というのも、彼らより上位の競争相手がレベルアップしているからだ。

モブリーはの存在はかなり大きい。昨季は離脱が重なり、最優秀守備選手の候補ではなかった。しかし今年は受賞のチャンスがある。

アトキンソンは、チームのバランスを崩さないためにさまざまな戦略を駆使している。キャブスの2-3ゾーンは、リーグ屈指のボリュームでありながら、スイッチするという興味深いものだ。また、フォワードのディーン・ウェイドをセンターにして、スモールボールにすることもできる。また、モブリーとアレンで巨大なサイズとリムプロテクションを持つこともできる。

戦術の変更に加え、アトキンソンはガード陣によりハードなディフェンスをさせるようになった。ミッチェルはジャズではひどいディフェンダーという評判だった。彼はアトキンソンの下で、試合終盤にインパクトのあるプレーをしている。ガーランドも似たような評判であったが、そのほとんどは彼のサイズ不足によるものだった。彼はスイッチで狙われたとき、よりフィジカルなプレーで挑んでいる。そしてジェロームはディフェンスの脅威となり、スティールを量産している。

キャブスはNBAの他のコーチでもいいチームになるだろう。彼らは多くの才能を持っている。しかし、これらのピースを組み合わせ、結果を残したのは、コーチ・オブ・ザ・イヤーに値する仕事だった。彼はスポーツ界の偉大な戦術家の一人として認められるに値する。

原文:Sporting News NBA Coach of the Year: Cavaliers' Kenny Atkinson got a second chance and literally ran with it

抄訳:小野春稀(スポーティングニュース日本版)

Stephen Noh

Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

小野春稀 Haruki Ono

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。大学生。元はスポーティングニュースのNBAニュースを毎日楽しみにしていた読者であったが、今では縁あってライターとして活動している。小学生の時にカイリー・アービングのドリブルに魅了されNBAの虜に。その影響で中高6年間はバスケに熱中した。主にNBAの記事を執筆している。