渡邊雄太のフェニックス・サンズでの日々は、計画どおりに進まなかった。3ポイントショット成功率は32.0%と、本来の鋭さを見せることがなかった。それは出場時間と機会の減少につながり、52試合のうち出場29試合にとどまる。そして渡邊はメンフィス・グリズリーズにトレードされた。
このトレードは、キャリアをよみがえらせる絶好の機会となる。グリズリーズは負傷に見舞われており、渡邊が復帰デビューを飾った2月12日(日本時間13日)のニューオーリンズ・ペリカンズ戦では、8選手が故障者情報入りしている。プレイできる選手を必要としているのだ。
そして渡邊はチャンスをつかんだ。ベンチスタートから最初のリザーブとして途中出場し、復帰初戦で25分の出場時間を得ている。出だしは不安定だったが、終盤はチームの反撃をけん引して接戦とすることに貢献。11得点、2リバウンド、2スティール、1アシストを記録した。
ここでは、渡邊を生かすグリズリーズのプランについて分析する。
渡邊雄太はグリズリーズで様々な役割担当へ
渡邊の長所のひとつは万能性だ。グリズリーズはそれを生かしていくだろう。
グリズリーズのテイラー・ジェンキンズ・ヘッドコーチは、ペリカンズ戦で渡邊をCJ・マカーラムの守備に起用した。そしてマカーラムをフィールドゴール15本中4本と苦しめた。
ジェンキンズHCは報道陣に「彼は常に自分の役割を理解している。ローテーションに入っていてもいなくても、ウィングでプレイしてもビッグのスポットでもね」と話している。
「とにかくコートに立って、自分の仕事をする。雄太のそういうところが大好きなんだよ」
サンズでの渡邊はほとんど3Pのスペシャリストというだけだった。グリズリーズではもっと自由にボールを持つことができるはずだ。
グリズリーズでの初戦、渡邊はFG試投が今季自己最多となる12本だった。3Pは7本中1本成功とリズムをつかめなかったが2ポイントショットは5本中4本成功。見事な走りやカッティングから得点をあげた。
ジェンキンズHCは渡邊を「攻守両面においてアーミーナイフのよう」と評している。スポットアップシューターという以上の起用になることを示唆したのだ。
渡邊が夏のFIBAバスケットボールワールドカップで見せていたスキルセットだ。それと同じことをNBAレベルでもできると証明する機会を得るだろう。
渡邊雄太の姿勢を評価するグリズリーズ
渡邊雄太は常に前向きな影響力を及ぼしてきた。グリズリーズは以前、彼が2年在籍した時にそれを知っている。ジェンキンズHCは報道陣に、目に見えない渡邊の価値について話した。
ジェンキンズHCは「仕事を愛している男なんだ」と述べている。
「彼がここに来てとても興奮しているのを知っている。彼はとにかくハードに競うんだ。それが大好きなんだよ。チームの勝利に役立つために、できることをなんでもしてくれる」
初戦でも渡邊はそのポジティブなエネルギーを見せ、ファンやチームメイトを大きく喜ばせた。
BIG MOOD 😤@wacchi1013 pic.twitter.com/9crBzQSt89
— Bally Sports: Grizzlies (@GrizzOnBally) February 13, 2024
グリズリーズにとっては非常に厳しいシーズンとなっている。ウェスタン・カンファレンスのトップシードを競うと見られていたが、ジャ・モラントや先日トレードされたスティーブン・アダムズ、ブランドン・クラークのケガで、リズムをつかむチャンスを得る前にシーズンが台無しとなった。良いかたちでシーズンを終えるのに、渡邊のようなベテランを生かせるかもしれない。
渡邊にとっても、良いパフォーマンスを見せ、来季の出場時間を得るための大きなチャンスとなる。渡邊には260万ドル(約3億9260万円/1ドル=151円換算)の2024-2025シーズンのプレイヤーオプションがある。
これは渡邊にとって、おそらくほかのどのチームでも見つけることができない唯一無二の状況だ。来季の西地区で有数の存在となるはずのチームで、多くの出場時間を得ることができる。トレードデッドライン(トレード期限)での移籍先として、これ以上のところはなかっただろう。
原文:Yuta Watanabe and the Grizzlies are a perfect match: Why Japanese forward should thrive in Memphis after trade(抄訳)
翻訳:坂東実藍