ビッグマッチ目白押しの今週末に世界が目撃する最高のボクサーが井上尚弥である理由

Dom Farrell

石山修二 Shuji Ishiyama

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この週末、世界の各地でいくつものボクシングの星が輝く。

ニューヨークのタイムズ・スクエアで現地5月2日(金)に行われるビッグイベント『FATAL FURY: CITY OF THE WOLVES』のトリプルヘッダーに登場するライアン・ガルシア(vsローランド・ロメロ)とデビン・ヘイニー(vsホセ・ラミレス)は、それぞれ勝機のあるだろう注目の一戦に臨んだ。

今回の勝利の先に、議論を呼んだあの2024年のスーパーファイト(ガルシアが勝利も薬物違反等発覚で無効試合に)の再戦実現を期待させたが、ヘイニーが勝利をあげた一方、ガルシアは惨敗を喫した。

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トリプルヘッダーのもう1試合に臨むスーパーライト級のスター、テオフィモ・ロペス(vsアーノルド・バルボサ)は、その2人がニューヨークの注目を独占することも、シンコ・デ・マヨ(5月5日のメキシコの祝日)とリヤド・シーズンのコラボレーションとも言えるスーパーミドル級4団体統一タイトルマッチ、サウル『カネロ』アルバレスウィリアム・スカルの一戦(サウジアラビア・リヤド、ANBアリーナ)に、ボクシングファンの関心が奪われることも許さないだろう。

バルボサの猛攻をしのいだロペスは終わってみれば実力通りの3-0判定勝ちを収めた。翌日のリヤドのカネロは年齢相応のパフォーマンス低下を感じさせながらも、元PFPキングとしてスカルを翻弄、スーパーミドル級10勝無敗を更新した。試合後にはPFPスターのテレンス・クロフォードとのドリームマッチ(9月12日、ラスベガス、アレジアント・スタジアム)が電撃発表された。

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だが、勘違いしないで欲しい。この週末に我々が目撃することになる「最高の星」であり「最高のボクサー」は井上尚弥だ。井上は現地5月4日(日)、ラモン・カルデナス(26勝1敗、14KO)を相手にラスベガスでスーパーミドル級4団体統一王座の防衛戦を行う。

『ザ・モンスター』井上がアメリカで試合をするのは、2021年6月にマイケル・ダスマリナスをボディショットで粉砕して以来となる。その試合が行われたのは、4,500人収容のバージン・ホテルズの『ザ・シアター』だった。

今回、約4年ぶりに『シン・シティ』に戻ってくる井上の試合会場は、2万人収容のT-モバイル・アリーナとなる。しかもメキシコの祝祭時期であるこのタイミングにこの大箱で試合をするのは、ボクシング界ではカネロの定番スケジュールだった。井上にとっては世界のビッグリーガーたるカネロに対して挑戦状を突きつけた形と言える。

4階級制覇に加え、2階級でアンディスピューテッド・チャンピオンに輝く井上にもはや証明すべきものは何もない。しかし、井上の(日本国内以外のエリアの)プロモーターであるトップランク社は、その破壊的パンチ力に相応しい地位をアメリカでも確立すべく、井上尚弥vsカルデナスの一戦をアメリカではPPV料金なしで視聴可能にするなど戦略的に仕掛けてきている。

軽量級階級では珍しい存在と言えるスター選手の井上(29勝0敗、26KO)は現在、スーパーバンタム級の主要タイトル4つを保持しており、バンタム級でも同様の成績を残した。過去にはライトフライ級とスーパーフライ級でもベルトを獲得している。

これらの実績から、井上は本誌『スポーティングニュース』のパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングで2位にランクインしている。ヘビー級選手が1位にランクインすることはPFPの精神に反するかもしれないが、オレクサンドル・ウシクがクルーザー級からヘビー級へ階級を上げてタイソン・フューリーを破り、井上同様に2階級制覇のアンディスピューテッド・チャンピオンとなったことはPFP1位に値すると言っていいだろう。

だが、2022年5月にディミトリー・ビボルに敗れるまで、PFPの王座に君臨していたのはカネロだった。

その1か月後、井上はフィリピンの英雄ノニト・ドネアを2ラウンドでKOし、圧倒的な勝利で2019年の両者の第1戦(判定勝利)後につきまとった疑念を払拭した。次なる標的はポール・バトラーで、井上はWBO王者のバトラーを圧倒し、なんとか徹底的な逃げ戦法で持ち堪えていたバトラーを終盤に仕留め、バンタム級の4団体統一王座獲得を成し遂げた。

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時事通信

バトラーとの試合は4団体統一のための形ばかりの試合だったかもしれないが、WBOとWBCの世界スーパーバンタム級チャンピオンのスティーブン・フルトンとの一戦は全く異なるものだった。この時ばかりは『モンスター』もさすがに手に負えない対戦相手を選んでしまったと考えた向きもあった。しかし体格で勝り、技術的にも優れたファイターだったフルトンもすぐに井上に圧倒され、完全に手玉に取られた。井上は相手をコントロールすると、ハイライトフィルムのようなKO勝利を収めた。

2023年のボクシング・デーに井上と対戦したマーロン・タパレスは、WBAとIBFのベルトを保持していた。彼はフルトンよりも良いファイトを見せ、第4ラウンドにダウンを喫した後も盛り返したが、第10ラウンドに有明アリーナのリングに沈められた。

そして、井上はハードパンチャーのメキシコ人、ルイス・ネリを相手にスーパーバンタム級4団体統一王座の初防衛戦で、あの東京ドームのリングに立った。マイケル『バスター』ダグラスがマイク・タイソンを破る歴史的な番狂わせを挙げたことで知られる会場で、井上が第1ラウンドにダウンを喫した時にはファンは驚愕した。だが、井上がそこから持ち直すと、第6ラウンドには激しい攻防戦を見せてネリを打ちのめした。このスリリングな一戦での決定的な勝利で、井上はさらに上の階級のパワーにも耐え、自身の強さを発揮できることを証明して見せた試合となった。

昨年9月のTJ・ドヘニー、そして今年にサム・グッドマンの負傷棄権のために行われたキム・イェジュンとの試合は、井上にとってネリ戦のような脅威とはなり得なかった。井上の前に敗れ去ったボクサーたちの悲しきリストにカルデナスも名を連ねることになるだろうが、だとしても爪痕を残すようなファイトが期待される。

井上がアメリカの大会場でメインを張る今回の試合に顔見世興行的な要素が感じられるとすれば、それはこの先の期待のためだろう。アマチュアで輝かしい実績を積んだムロジョン・アフマダリエフは、2023年4月のタパレス戦に僅差で敗れたとはいえ、井上がスーパーバンタム級を完全に制圧する上で最後の障壁となる存在だ。カルデナス戦前にもかかわらず、9月に東京での対戦が決定したという報道もでている。

また井上は5階級制覇の快挙に手の届くところまで迫っている。過去に井上と対戦したフルトンは現在WBC世界フェザー級チャンピオンだが、同級のWBA王者であるリバプール出身のニック・ボールは井上の今後の対戦相手として注目されている。

さらには井上同様に無敗記録を誇るKOマシン、中谷潤人との日本人対決にも関心が集まっている。

現在32歳の井上は、おそらくその輝かしいキャリアの最終段階に差し掛かっている。今後も井上には激しいファイトが続いていくと予想される。そんな井上がラスベガスのネオンサインにその名前を刻むカルデナス戦を見逃すのは愚の骨頂だ。

📺📱井上尚弥vsラモン・カルデナス:ライブ中継(テレビ放送・インターネット配信)

メインの井上尚弥vsラモン・カルデナスの一戦を含む米ラスベガスで行われる同イベントは、日本国内向けには『Prime Video Boxing 12』として『Amazonプライムビデオ』で独占ライブ配信される。中野幹士の海外デビュー戦を含めた大会中7試合中5試合の中継を予定する。

『Prime Video Boxing 12』の視聴にはAmazonプライム会員登録が必要。初回登録には(および久々の登録でも)30日間の無料期間があり、その後は月額600円または年額5900円となる。学生(高校生以下不可)であれば『Prime Student』(学割)会員登録で初回6か月間の無料体験後、月額300円/年額2950円と通常の半額でAmazonプライム特典を利用できる(最長4年間)。

▼配信予定

  • ライブ配信時刻:2025年5月5日(月・祝)  午前8:30〜

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※試合開催・放送配信内容・各サービスの料金等は主催者・放送局の都合により変更になる場合があります。料金は消費税込み価格。最新情報は各公式サイト等をご確認ください。

原文:Why Naoya Inoue is the best boxer fighting this weekend
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)、編集・校正:神宮泰暁(スポーティングニュース日本版編集部)

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Dom Farrell

Dom is the senior content producer for Sporting News UK. He previously worked as fan brands editor for Manchester City at Reach Plc. Prior to that, he built more than a decade of experience in the sports journalism industry, primarily for the Stats Perform and Press Association news agencies. Dom has covered major football events on location, including the entirety of Euro 2016 and the 2018 World Cup in Paris and St Petersburg respectively, along with numerous high-profile Premier League, Champions League and England international matches. Cricket and boxing are his other major sporting passions and he has covered the likes of Anthony Joshua, Tyson Fury, Wladimir Klitschko, Gennadiy Golovkin and Vasyl Lomachenko live from ringside.

石山修二 Shuji Ishiyama

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。生まれも育ちも東京。幼い頃、王貞治に魅せられたのがスポーツに興味を持ったきっかけ。大学在学時に交換留学でアメリカ生活を経験し、すっかりフットボールファンに。大学卒業後、アメリカンフットボール専門誌で企画立案・取材・執筆・撮影・編集・広告営業まで多方面に携わり、最終的には副編集長を務めた。98年長野五輪でボランティア参加。以降は、PR会社勤務・フリーランスとして外資系企業を中心に企業や団体のPR活動をサポートする一方で、現職を含めたライティングも継続中。学生時代の運動経験は弓道。現在は趣味のランニングで1シーズンに数度フルマラソンに出場し、サブ4達成。