NFLの名将ビル・ベリチックがノースカロライナ大ヘッドコーチとなった訳

石山修二 Shuji Ishiyama

Daniel Chavkin

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多くが予想していた形ではなかったが、ビル・ベリチックがコーチとしてフィールドに戻ってきた。

長年にわたり、NFLニューイングランド・ペイトリオッツを指揮したベリチックが、NCAAカレッジフットボールのノースカロライナ大(以下UNC)のヘッドコーチに就任した。ベリチックがカレッジフットボールで指揮を取るのはこれが初めてとなる。ベリチックは2018年から24年にかけてターヒールズを指揮し、44勝を挙げたマック・ブラウンの後任となる。

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(ビル・ベリチック、チャペルヒルへようこそ!

 8度のスーパーボウル制覇を果たしたコーチがノースカロライナ大の新しいヘッドコーチにすることが正式に決定)

ベリチックのこの決断には多くの疑問符が浮かぶ。というのも、ベリチックは当初、NFLでの復帰を希望していたように思われたためだ。しかし、最終的にはコーチとして現役復帰するためにカレッジへとフィールドを移す決断を下した。

ここでは、ベリチックがなぜUNCのヘッドコーチに就任したのか、その理由を紐解いていく。

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ベリチックはなぜUNCのヘッドコーチを引き受けた?

ベリチックとUNCの間には過去につながりがあった。

ベリチックの父親、スティーブは1953年から1955年の3年間、チャペルヒルでアシスタントコーチを務めていたことがあった。スティーブはベリチックの幼少時に主にカレッジ・レベルでコーチをしていたが、ベリチック自身はカレッジフットボールでのコーチ経験はない。

現地9日(月)に放送された「パット・マカフィー・ショー」の中で、ベリチックはノースカロライナの仕事に就くことになれば「大学レベルでNFLプログラム」を運営するつもりだと語り、NFLでの豊富な経験を新たな挑戦に活かしたいという意向を示していた。

11日(水)に正式発表された後、ベリチックは「この機会に興奮している」と述べ、「常々カレッジでコーチをしたいと思っていた」と語った。

(ビル・ベリチックが学校へ戻ることに)

NFLのコーチとしてトップクラスの成功を収めてきたにもかかわらず、2023年シーズン終了後にペイトリオッツを退団したのち、ベリチックがヘッドコーチ候補として注目されることはなかった。今年1月、米ケーブル局『ESPN』はアトランタ・ファルコンズがベリチックをヘッドコーチ候補としてインタビューをしている際、ベリチックは「自分がその職に就くと思っていた」と報じられた。だが、実際にはその座を射止めたのはベリチックではなくラヒーム・モリスだった。

ベリチックはニューイングランド時代、チーム運営全体に対して強い権限を持っていた。新しいチームでも同様のコントロールを望んだことで、NFLの各チームはベリチックの起用を思いとどまることになったと考えられる。結果として、ベリチックはその実績にもかかわらずNFLでのヘッドコーチの職に手にすることはできなかった。

そこで今シーズン、ベリチックはアナリストとして毎週、ESPNで「パット・マカフィーショー」とマンデーナイトフットボールの副音声的番組「マニングキャスト」で解説を務めてきた。だが、来シーズンには再度NFLのヘッドコーチへの復帰を狙うのではと期待されていた。

ベリチックにはNFL歴代最多勝利ヘッドコーチの記録を更新するチャンスがある。そのため、即座に勝利を狙えるチームでヘッドコーチに復帰するのではと考えられていた。しかし、ここにきてベリチックがUNCのコーチに就任するという話が大きくなり、正式にターヒールズのヘッドコーチとしてカレッジフットボールの世界に飛び込むことになった。

ベリチックのUNCヘッドコーチ就任における最大の懸念は、大学側が彼に充分な給与を支払うことができるのか、現在のNIL(Name, Image, Likeness/氏名・イメージ・肖像のパブリシティ権)が浸透した新たな状況下で財政的に競争できるかどうかという点にある。現在、UNC側はフットボールプログラムにおけるNILパッケージを400万ドルから2000万ドルに増額することを検討していると報じられている。

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ベリチックの契約の詳細

UNCの発表では、ベリチックの契約は5年契約となっている。金額は年間1000万ドルの総額5000万ドルとなっていると米スポーツニュースサイト『The Athletic』が報じている。

ベリチックの年俸1000万ドルは、ケイレン・デボアー(アラバマ大)とマイク・ノーベル(フロリダ州率大)に並び、カレッジフットボールで6番目に高額な報酬となる。

契約内容の全容はまだ公表されていないが、UNCは公立学校のため、正式な契約が締結された段階で契約内容は公開されることになる。

ベリチックの年齢は?

ベリチックは現在72歳、来シーズンUNCで最初のゲームを指揮する時には73歳になる。彼の前任であるマック・ブラウン(73歳)に代わり、現在のカレッジフットボールの最年長ヘッドコーチとなる。

ベリチックの息子は?

ベリチックの息子、スティーブは現在、ワシントン大ハスキーズの守備コーディネーターを務めている。

スティーブのコーチ歴は、ペイトリオッツで父ビルのアシスタントを務めるところから始まった。2012年から2023年の間、スティーブはビルの下で、セーフティー・コーチ、ディフェンシブバック・コーチ、アウトサイドラインバッカー・コーチなど、ディフェンス・コーチの様々な役割を務めた。また、ニューイングランド時代の終盤には、選手たちにディフェンスのプレー指示を出す役割も任されていた。

ベリチックのNFLでの勝利数

コーチ名NFL勝利数
ドン・シュラ328
ジョージ・ハラス318
ビル・ベリチック303
アンディ・リード270
トム・ランドリー250

ベリチックはあと26勝で、ドン・シュラの持つNFL歴代最多勝利記録を更新する。その記録を樹立するためにNFLの仕事を引き受けるのではないかと考えられていた。しかし、今回UNCのコーチを引き受けたことで、ベリチックがNFLに復帰する機会はないと考えられ、通算勝利数は303勝で確定する可能性がある。

ベリチックがペイトリオッツを去った理由は?

ベリチックとペイトリオッツは、2023年シーズン後に契約を解除することで合意した。このシーズン、ペイトリオッツは1992年以来の最悪の成績となる4勝13敗に終わった。ベリチックの最後の4シーズン中3シーズンでペイトリオッツはプレーオフ進出を逃し、2018年シーズンにスーパーボウル制覇を果たして以来、プレーオフには一度も出場していない。

ベリチックは、ニューイングランドでの在任期間中、266勝121敗という成績を残した。これは、単一チームのコーチとしては歴代2位の勝利数になる。しかし、ベリチックとペイトリオッツともに次のステップに進むべき時期だと考え、38歳のジェロッド・メイヨをベリチックの後任として昇格させた。

原文:Why is Bill Belichick going to UNC? NFL legend accepts college job in stunning hire for Tar Heels
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)

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スポーティングニュース日本版アシスタントエディター

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Daniel Chavkin is a Digital Content Producer for The Sporting News. A 2018 graduate from the University of Maryland, he has previously written for Sports Illustrated, NBC Sports and NFLTradeRumors.com.