【試合後一問一答】日本とセルビアの両チームが試合を振り返る|FIBA女子W杯2022

大西玲央 Reo Onishi

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9月23日、FIBA女子バスケットボールワールドカップ2022のグループB、日本対セルビアの一戦がオーストラリアのシドニー・スーパードームで行われ、日本は64-69で惜敗した。

女子日本代表の恩塚亨ヘッドコーチと高田真希、女子セルビア代表のマリーナ・マルコヴィッチHCとイヴォン・アンダーソンが試合後の記者会見でメディアからの質疑に応じた。

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※日本代表は日本語、セルビア代表は英語での回答。質問は内容の概略。英語部分は翻訳。


日本代表 試合後会見

――試合の感想。

高田:ディフェンスのところで相手にうまくノーマークを作られてしまって、そこで高確率でシュートを決められてしまったり、ローテーションミスでゴール下でやられたりしてしまっていたので、そういったところを徹底できなかったことを最後まで引きずってしまったかなと。

ただ、前半ダブルスコアで負けていたところをしっかり盛り返せたっていうのは、自分たちの自信にもつながると思うので、良いところをしっかり伸ばしていきたいです。

トーナメントじゃないので、グループを少しでもいい順位で突破したいので、しっかりそういった良いところの自信をつけて、悪かったところを修正して次に臨みたいなと思います。

恩塚HC:非常に難しい試合だったなと思っています。選手たちは終始チームのために戦ってくれたなと思っています。ただ、ここ一本というシュートの確率の差であったり、ルースボールを取りきれなかったというところで、最後に流れを掴みきれなかったのかなと振り返っています。

ただ、第1クォーターの大きなダメージからカムバックするということに関して、高田キャプテンを中心に良い声をかけあって戦い抜くんだっていう気運を持ってプレイしてくれたことを評価して、大切にしていきたいなと思っています。

第1Qで受けたダメージのポイントとして、一番改善していきたいなと思うのは、オフェンスでできたチャンスをしっかりと自信を持って取り切っていく。初めにシュートが入らなくなった時に選手たちの判断に迷いが生じているように見えました。そこを、練習して成長してきた自分として思い切ってプレイできるように支えていくという役割を果たしていきたいなと思っています。

――いつもよりもドリブルが多く、パスが少ないように感じられたが。

恩塚HC:そう思います。なぜそうなってしまったかというと、ピック&ロールでチャンスを作ろうとして、ペイントタッチを狙っていたのですが、そのスクリーンのセットアップのところでうまく剥がせなかった。

そのことによって、ペイントタッチにつながらず、ボールが停滞してしまったという風に振り返っています。

――セルビアの方が日本のやりたいオフェンスをやっているように見えたが、なぜそうなったのか。

恩塚HC:トランジションのところで言うと、オフェンシブリバウンドを取られてしまったことがトランジションオフェンスに繋げられなかったポイントだと思います。

ドライブ&キックのことに関しては、先ほどお話ししたピック&ロールのところでズレを作ることができなかったというところがポイントだと思っています。

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セルビア代表 試合後会見

――試合の感想。

アンダーソン:この試合が自分たちにとって重要であることを理解した状態で臨みました。昨日負けたことで、今後はどの試合も重要となります。今朝のマリーナとのミーティング後、集中力を切り替えていきました。

チームリーダーとして、自分がもっと良いプレイをしないとと感じていて、そうすることに徹していました。若い選手たちがかなりステップアップしてくれました。今日見せることができた内容こそが、この夏ずっと私たちが取り組んできたことだったと思っています。それはとにかく全員がハードにプレイし、全員がプレイに関わるということ。それが結果に繋がりました。

マルコヴィッチHC:彼女が大体言ってくれました。付け加えるとすれば、日本で2シーズンを過ごしてきたこともあって、日本代表がどれだけ優れたチームなのかを私はとてもよくわかっています。東京で彼女たちがメダルを獲得したことからもわかる通り、日本代表はかなり強敵です。さらに、日本は国内リーグ(Wリーグ)のレベルもとても高い。

それを踏まえた上で、この若いチームがそんな強敵に勝てたということはとても大きな収穫です。今は世代交代の最中で、とても若いチームです。さらに大きな問題として抱えているのが、セルビアの国内リーグの質がとても低いということです。国内リーグのレベルが低いことで、彼女たちはなかなか良い経験を積むことができません。だからこそ、私がとてもリスペクトしている日本代表のようなチームに勝てたことは、とても重要なのです。

――ショットはあまり決まっていなかったが、8アシストで貢献していたことについて。

アンダーソン:私の役割は、チームとして必要なこと、マリーナに言われたことを何でもやるというものです。もちろん、もっと決められれば良かったなと思っています。厳しいスケジュールのなかでプレイしていますが、それを言い訳にすることはできません。

ショットが決まっていなかったとしても、コートにいる以上はポジティブな影響をもたらす必要があります。自分ができることに徹していました。そして周りに決められる選手がいたことにとても感謝しています。

ディフェンスが私に集中することで、周りにオープンを作ることができていました。そこで、早い段階でパスすることを選択し、周りが正しくプレイしてくれることを信頼する。そういったチームによる努力をお見せできたかと思います。

それこそがポイントガード。決してイヴォン・ショーになる必要なんてないんです。なぜなら、これはセルビア代表なのですから。

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――日本のディフェンスをどう突破したのか。

マルコヴィッチHC:何度も言うように、日本代表のことはよく知っており、とてもリスペクトしています。そしてあのチーム相手に特別な作戦というのは立てられません。一番重要なのは、全ての選手たちが出来る限りのプレイをし、出来るだけミスをしないことです。

昨日と違い、今日はそれをすることができました。イヴォンのように経験のある選手から若い選手たちまで、全員がそれぞれの役割を理解し、ステップアップしてくれました。全員の努力が必要です。

昨日よりもターンオーバーを減らし、今日のようにアシストを増やしていくことが必要です。単純に、全員がそれぞれの仕事を全うするのです。昨日少しあったように、何人かの選手が完全に集中できていないと、今日のような強敵相手に勝利することはできません。

――活躍したティナ・クライスニクの重要性について。

ティナはチームのキャプテンです。前の世代からプレイしている重要な存在です。ソニア(Sonja Vasić)、イェレナ(Jelena Brooks)、ダイアナ(Dajana Butulija)といった選手たちはもういません。彼女はポイントガードのイヴォンとともに、このチームをリードしてくれる人間性を持ち合わせていると感じていたため、キャプテンに任命しました。

若く、世界選手権などを経験したことのないような選手が多いこともあって、チームをまとめるのは決して簡単なことではありません。そんななか、この集団を真のチームとしてまとめる手助けを、ティナとイヴォンはしてくれています。

先ほどイヴォンが言っていたように、私たちは3か月間それに時間を費やしてきたのです。私は誰かにこの子たちを導けと言われたわけではありません。セルビア協会にやれと言われたわけではありません。私自身が、この選手たちとやりたいのだと決断したのです。

選手たちは、それぞれの自由な時間を全てこのセルビア代表のために捧げてくれています。私自身もフェネルバフチェと契約したばかりで自由な時間が少ないなか、このチームを指導したいと感じているのです。

――イージーショットを多く打てていたことについて。

これもやはりチームワークから生まれたもので、我慢強くプレイした結果でもあります。日本はプレスなど、目まぐるしく変わり続けるディフェンスを仕掛けてきます。そこに対して、我慢強くオフェンスをすることができました。

チームはそうやって成長していくものです。子供が成長していくのと似ていると思います。ただ今回は、昨日の試合から24時間も経過しないうちに、一晩で成長するようにチームにハッパをかけました。

チームとしてまとまるように、全員でクリエイトし、相手の強固なディフェンスに対して最適なシュートを打つ状況が作れるように我慢強くオフェンスをするように指示をしました。

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大西玲央 Reo Onishi

大西玲央 Reo Onishi Photo

アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。