箱根駅伝の往路5区を制する『山の神』とは? コースの特徴は?

牧野豊 Yutaka Makino

及川卓磨 Takuma Oikawa

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箱根駅伝三大山の神、今井正人(順天堂大)、柏原竜二(東洋大)、神野大地(青山学院大)

2024年の正月、箱根駅伝(正式名称:東京箱根間往復大学駅伝競走)が通算100回目の開催を迎える。ここでは、箱根駅伝で最も過酷な区間とされている第5区のコースの特徴と、これまで5区を制してきた歴代の『山の神』と呼ばれた選手たちについてまとめる。

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箱根駅伝の5区とは? コースの特徴

箱根駅伝の第5区は全長20.8km、神奈川県の箱根登山線風祭駅前、鈴廣かまぼこの里の駐車場を利用した小田原中継所(第4中継所/各校4区の選手から5区の選手に襷を渡す場所)から往路のフィニッシュ地点となる箱根・芦ノ湖駐車場までのコースである。

5区はそのコース特徴から、往路の中でも最も過酷なコースと言われる。

地形図によると、スタートから1.5km近辺までは比較的平坦だが、その後は厳しい道のりとなる。標高50m前後の1.5km手前を起点にすると、標高874mの16.3km付近(国道1号線の最高地点)まで上り坂が続く。そしてそこから標高710m前後の芦ノ湖まで約4.5m下り基調となるコースとなる。つまり『高低差820m・約15kmの上り』、『高低差160m近く・4.5kmの下り』という極端なアップダウン、ほぼ山中のコースゆえ蛇行するコースも多いこと、木陰で覆われるエリアが多く寒暖差の激しくなる傾向があるため低体温症などの危険性が高いことなど、厳しい条件下のコースだ。

そのため、5区(および復路の6区)は『特殊区間』と呼ばれている。また、登りコースが苦手な選手は平地以上にタイムをロスする危険性をはらんでおり、選手間の差がどの区間よりも開きやすい特徴がある。

初代 山の神・今井正人

近年、その特殊性が広くチーム戦略に反映されるきっかけになったのは、順天堂大学の今井正人選手(現・トヨタ自動車九州)の登場だった。

2005年、当時2年生の今井選手はトップに6分57秒差の15番手でタスキを受けて出走。すると、次々と前を行く走者を捕らえ、気づけば11人抜き。当時の区間新記録で区間賞を獲得し、周囲を驚かせた。

2006年はトップに2分26秒差の6番手で襷を受けると5人抜きで往路優勝に貢献。そして2007年は2年前の区間記録を更新する走りでトップに4分9秒差の5番手から往路優勝を奪取し、チームを総合優勝に導いた。

このとき、テレビの実況中継のアナウンサーが今井選手を『山の神』と表現したことで、そのフレーズが浸透し始めるきっかけになったと推測されている(諸説あり)。

二代目 山の神・柏原竜二

そして『箱根駅伝といえば5区』という概念を決定づけたのが、東洋大学の柏原竜二選手である。

柏原選手は今井選手が卒業した2年後の2009年に1年生で5区を任されると、いきなり区間新記録&区間賞で衝撃の箱根デビューを飾る。すると、2012年まで4年連続5区区間賞を獲得し、うち3回で区間新記録をマーク。チームも4年連続往路優勝、うち3回は総合優勝という王朝を築いた。この柏原選手の活躍によって、『山の神』は普段陸上を見ない一般層にも浸透する箱根駅伝を物語るパワーワードになった。

三代目 山の神・神野大地

その3年後の2015年、青山学院大の神野大地選手が46秒差の2番手から快調なリズムで5区を走り切って逆転劇を演じ、チーム初の往路優勝、そして総合優勝に貢献した。翌年も青学大は箱根駅伝2連覇を果たし、神野選手はそのときは区間2位だった。今井選手と柏原選手ほど個人成績が目立つわけではないが、それでも『山の神』として強く印象に残るのは、悲壮感なく強さを発揮した青学大の清々しさ、『神野』という苗字と『山の神』というフレーズがマッチングした結果ともいえる。

箱根駅伝の『山の神』にまつわる選手としては、初代が今井選手、二代目が柏原選手、そして三代目が神野選手とされることが多い。これは決してオフィシャルな呼称ではないものの、各校のチームづくり、大会本番での区間配置戦略において、5区がエース区間の2区と並ぶ重要区間として認識されていることは間違いない。

ちなみに20世紀の箱根駅伝では、大久保初男選手(大東文化大)が柏原選手に匹敵する成績を残している。大久保選手は1974年から4年連続5区区間賞を獲得し(うち2回区間新記録)、1975~1976年のチームの総合2連覇に大きく貢献。当時そのような呼称はなかったものの、元祖『山の神』といっても過言ではない存在だ。

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箱根駅伝のコース

往路

  • 1区 大手町・読売新聞社前~鶴見(21.3km)
  • 2区 鶴見~戸塚(23.1km)
  • 3区 戸塚~平塚(21.4km)
  • 4区 平塚~小田原(20.9km)
  • 5区 小田原~芦ノ湖駐車場入り口(20.8km)

復路

  • 6区 芦ノ湖駐車場入り口~小田原(20.8km)
  • 7区 小田原~平塚(21.3km)
  • 8区 平塚~戸塚(21.4km)
  • 9区 戸塚~鶴見(23.1km)
  • 10区 鶴見~大手町・読売新聞社前(23.0km)

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牧野豊 Yutaka Makino

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東京・神田生まれの神田育ち。上智大学卒。1993年から約30年間、スポーツ専門出版社で雑誌・書籍・ウェブ媒体の取材・原稿執筆・編集全般に携わる。その間、バスケットボール(NBA含む)、アメフト(NFL含む)のムック、水泳競技、陸上競技の月刊定期誌の編集長を歴任。各競技の国内主要大会をはじめ、アジア大会、世界選手権、オリンピック等、国際大会の現地取材を経験。

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スポーティングニュース日本版編集長。千葉県生まれ、茨城県育ち。2000年日本大学卒。大学在学時を含めて丸14年間バスケットボール専門誌の編集者として企画立案・取材・執筆・編集・誌面制作・マルチメディア運営等に携わる。2013年秋にNBA日本公式ウェブサイト『NBA Japan』編集長就任。サイトやNBA日本公式ソーシャルメディアの新規開設に携わると同時にメディア運営を主導。2022年4月より現職。主な競技経験はバスケットボール、野球、サッカー。