【コラム】スペイン優勝が女子サッカーにもたらす大きな前進(とわずかな後退)|FIFA女子ワールドカップ2023

Mike DeCourcy

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・FIFA女子ワールカップがもはやアメリカ代表の専売特許でなくなったと思われることは世界的にも前進と言える。

・連盟やコーチングスタッフによる処遇に抗議して、代表候補のうち半分近い選手が大会に参加しなかったにもかかわらず、スペイン代表が初優勝を飾ったことは後退と感じられる。

・スペイン、イギリス両国のメガクラブが女子サッカーへの関心を高め、巨額の投資をするようになった結果、両国の代表が早いタイミングでワールドカップ決勝に進出したことは前進と言える。

・スペイン代表のキャプテン、イヴァナ・アンドレスがワールドカップのトロフィーを掲げた直後、ポディアムの端でつまづいたことはプラスマイナスゼロだ。幸運なことに彼女に怪我はなく、ここまでの努力を無にすることも、いまだかつてない歓喜の渦を台無しにすることもなかった。

・スペイン代表がワールドチャンピオンに輝いたのは過去に一度だけ、2010年の男子ワールドカップ南アフリカ大会でオランダを破った時だ。アンドレス・イニエスタ、シャビ、カルレス・プジョルが勝利に導き、GKイケル・カシージャスがトロフィーを掲げた男子チームによく似た、ポゼッション・サッカーを採用して栄冠を勝ち取ったことは、女子チームにふさわしいとも言えるが、同時に王者としてこの先4年間を戦う上では問題となるように思われる。

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ポゼッション・サッカーは、イングランド代表を封じ込める上では効果的だった。イングランド代表”ライオネス”を苦しめたのは、スペイン代表がボールへ素早く密集・奪還し、即座に得点機会を作り出したこと。この試合、唯一の得点となった左SBオルガ・カルモナのゴールもまさにこれだった。

イングランドのベテラン、ルーシー・ブロンズはフィールド中央で果敢に前進を試みたが、4人の相手選手に囲まれると簡単にボールを奪われてしまった。その後、MFテレサ・アベレイラが左サイドのマリオナ・カルデンテイへと素早く展開、カルデンテイからボールを受けたカルモナがゴール右隅にシュートを決めた。

「今は言葉にならないし、信じられない。素晴らしいトーナメントを過ごせたことを誇らしく思う。大会を通じて楽しむことができたし、結果に値するチームだと思う」と大会最優秀選手「ゴールデンボール賞」に輝いたMFアイタナ・ボンマティはFOXスポーツの取材で答えた。

「予選での最初の対戦で彼女たちが決めたゴールのことはみんな知っている。(イングランド代表には)素晴らしい選手が揃っているし、勝利への強い意欲を持っている。でも、私たちもこの大会に向けて何年も努力してきたし、勝利を渇望していた。このトロフィーはその結果です」

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"Las 15"による抗議とその影響

スペイン代表が頂点へと急速に上り詰めるまでには障壁もあった。2019年フランスでの女子ワールドカップのラウンド16では、アメリカ代表に脅威を与えたものの1-2で敗れた。この時の先発には、今回のイングランド戦と同じ選手は2名しかいなかった。またスペイン代表は昨年の女子EURO2022準決勝でも、イングランド代表に同じく1-2で敗戦した。この時は、連盟に対する抗議のため、今回のワールドカップに出場しなかった多くの選手がラインアップに名を連ねていたにもかかわらずだ。

“Las 15”と呼ばれた15名選手の抗議が公表されたのは昨年9月のこと。2015年、2019年とワールドカップを制したアメリカ代表との重要なフレンドリーマッチを間近に控えたタイミングだった。

スペインサッカー連盟は、同じ文面のメールを連盟に送付してきた15名の選手たちを公表した。選手たちは「自身の精神状態、さらには健康に重大な影響がある」として代表チームへの招聘を辞退すると同時に、連盟が「選手たちの最高のパフォーマンスを実現するために必要な、すべての要素に配慮した本格的なプロジェクトに取り組む」ことを求めていた。

ニュースメディア『The Athletic』によれば、選手たちは準備期間が十分でないこと、飛行機移動であるべきところをバス移動にされるなど、移動の手配レベルが不十分なこと、プライバシーが侵害されていることなどを訴えていたという。

世界年間最優秀選手「バロンドール賞」に2度輝くアレクシア・プテジャスは、このメールを送った15人の一人ではなかったものの、ジェニファー・エルモソやベテランDFイレーネ・パレデスとともに抗議への支持を表明した。しかし、連盟はこれらの主張を退けるとともに、選手たちは代表チームへ復帰したいのであれば謝罪する必要があると通告した。

最終的には8名の選手が代表選手候補に復帰し、3名が実際に今回のワールドカップのロスターに名を連ねた。

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ベテラン不在とプロ化が生み出したチャンス

今大会でのパフォーマンスを見る限り、選手選考は入念に行われたと言えそうだ。選ばれたボンマティ、カルデンテイ、右SBオナ・バジェの3人は今大会の決勝戦に先発したし、パレデス、エルモソ、プテジャスも代表入りし、パレデス、エルモソの二人は決勝のイングランド戦にも先発した。プテジャスだけは、2022年に膝の手術の影響もあり、今大会を通じて出場機会が限られていた。

ボンマティをはじめとする主力選手たちの復帰がなければ、スペイン代表のワールドカップ優勝はなかっただろう。一方で、プテジャスらベテラン勢の不在はサルマ・パラジュエロのような若い選手たちの活躍の機会を生み出していた。19歳のパラジュエロは今大会、準々決勝、準決勝とゴールを挙げ、今回で最も輝いた選手となった。

パラジュエロは故郷のサラゴサで3シーズンを過ごしたのち、ビジャレアルに移籍して37試合で23ゴールをマーク。昨夏にバルセロナと契約を結ぶと、最初のシーズンでチャピンオンズリーグを勝ち取った。

バルセロナは1988年から女子サッカーチームをスポンサードしてきたが、2015年にプロ化に踏み切ったことで、チームとして4年連続スーペルリーガ制覇、UEFA女子チャンピオンズリーグを2度制覇すなどの傑出した結果を手にし、スペイン代表チームの台頭にも貢献した。今回の決勝戦でも先発メンバーのうち7人の選手がバルセロナ所属だった。3年前に女子サッカーのプロチームを発足したレアル・マドリードからも、この試合で活躍したカルモナを含む2名が代表入りした。

スペイン連盟はこの歓喜を満喫し、トロフィーを飾り、賞金を手にすることはできるだろう。だが、こうしてみると、この結果を生み出すうえで、連盟は蚊帳の外だったと言える。そして、それこそがスペインの女子サッカー、そして今のところ、このスポーツの真の強みと思われてならない。

原文:Spain triumph at FIFA Women's World Cup feels like a huge step forward for sport — and a bit of a step back
翻訳:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)

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Mike DeCourcy

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Mike DeCourcy has been the college basketball columnist at The Sporting News since 1995. Starting with newspapers in Pittsburgh, Memphis and Cincinnati, he has written about the game for 37 years and covered 34 Final Fours. He is a member of the United States Basketball Writers Hall of Fame and is a studio analyst at the Big Ten Network and NCAA Tournament Bracket analyst for Fox Sports. He also writes frequently for TSN about soccer and the NFL. Mike was born in Pittsburgh, raised there during the City of Champions decade and graduated from Point Park University.