【FIBAワールドカップ2019】世界を知った日本代表と八村塁を知った世界

及川卓磨 Takuma Oikawa

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9月5日に中国・上海の東方体育中心(オリエンタル・スポーツ・センター)で行なわれたFIBAバスケットボール・ワールドカップ2019、1次ラウンド第3戦のアメリカ戦で、日本は45-98で大敗し、世界最高峰との差を改めて感じる結果となった。1日と3日には、それぞれトルコ、チェコにも二桁得点差で敗れ、ヨーロッパ勢との力の差も浮き彫りとなった。

だが、1次ラウンド3試合で平均29.9分出場、13.3得点、5.7リバウンド、2.3アシストを記録した八村塁(ワシントン・ウィザーズ)は、決してこの結果を悲観してはいない。むしろ、世界の強豪との差を感じられたことをプラスに捉えている。八村はトルコ戦で15得点、7リバウンド、2スティール、チェコ戦でフィールドゴール12本中8本成功の21得点、6リバウンド、4アシストをマークし、日本を牽引した。

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5日のアメリカ戦で約24分プレイし、4得点、4リバウンド(第4クォーターは出場せず)を記録した八村は、「できる限りのことをやって、できたところもありました」と試合を振り返っている。

「反省点としては、オフェンスでもディフェンスでもそうですけど、ディフェンスやリバウンドは改めて、やっぱり大事だなということがわかりました」。

日本は、アメリカにFG39本(成功率48.1%)、3ポイントショット14本(成功率34.1%)を決められ、リバウンドは58本を奪われた。一方で日本は、FG17本(成功率27.4%)、3P3本(成功率17.6%)、リバウンド33本だった。

これらの数字は両者の実力差を如実に表していると言えるが、それでも八村は「ディフェンスの部分では僕らもずっと強化してきているなかで、アグレッシブにできたんじゃないかと思います」と、チームのディフェンスに対する姿勢を評価している。

試合を通じて積極的な守備をやり続けた結果、日本は第1Qから第3Qまですべて10点以上の点差をつけられたものの、第4Qだけは14-14と互角のスコアに持ち込んでいる。第4Q開始時点ですでに53点(31-84)という大差がついていたため、アメリカが手綱を緩めた面は否めないが、それでも日本が最後まであきらめずにプレイし続けたことは評価されるべきだろう。強者を前にして挑み続けることができなければ、その差はいつまでも埋まりようがないからだ。

八村は、「来年はオリンピックがありますし、アメリカみたいな強いチームとどんどん戦っていくと思うので、世界のレベルを感じられたのはよかったです」と、大会を通じて日本と世界の強豪との距離を知ることができたことに価値を見出している。チームとして何が足りないかを経験することで、次はその差を埋めるための作業に進むことができる。

1次ラウンドでは日本のほかにも中国(1勝2敗)、韓国(3敗)、イラン(3敗)、フィリピン(3敗)、ヨルダン(3敗)と、アジア勢はすべて敗退し、17-32位順位決定ラウンドへ回ることが決まった。八村は率直に「今のアジアのバスケットボールは弱い」と認識し、その状況を変えたいと願っている。

「アジアのほかのどの国も、(1次ラウンドで)落ちてしまったので、今のアジアのバスケは世界に通用しない、ほかと比べても弱い地域になっていると思います。僕らもこれから、日本も含めて、アジアでバスケを盛り上げていけたらと思います」。

1次ラウンドを通じて、チームとしては世界との距離を知ることとなったが、逆に、世界は八村の実力を知ることとなった。上海でもファンから大きな声援を受けた八村は、NBAドラフト、サマーリーグ、ワールドカップを経て、いまや日本だけでなくアジアを代表する選手になりつつある。これから八村がNBAやFIBAの国際舞台で活躍していくことは、アジアのバスケットボールのレベルを引き上げることにも繋がるだろう。

6日、八村は体調面を考慮してワールドカップの残りの試合を欠場することとなったものの、この夏を通じて彼が残したインパクトは決して小さくない。ドラフトからのこの数か月の間に八村が見せたプレイにより、多くの人が彼の実力に確信を抱くようになったはずだ。

一足先にワールドカップを終えた今、NBA公式戦デビューに向けた準備に入る八村にかかる期待は、ドラフト時やサマーリーグ時よりも、さらに大きなものになっている。八村自身も「(NBAの)シーズンを楽しみにしている」と、アメリカ戦の後に語っている。

「しっかり準備して、チームがどういうバスケをするかわからないですけど、できるだけ力になりたいと思います」。

ウィザーズのトレーニングキャンプは10月1日(日本時間2日)に始まる予定だ。

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及川卓磨 Takuma Oikawa

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スポーティングニュース日本版編集長。千葉県生まれ、茨城県育ち。2000年日本大学卒。大学在学時を含めて丸14年間バスケットボール専門誌の編集者として企画立案・取材・執筆・編集・誌面制作・マルチメディア運営等に携わる。2013年秋にNBA日本公式ウェブサイト『NBA Japan』編集長就任。サイトやNBA日本公式ソーシャルメディアの新規開設に携わると同時にメディア運営を主導。2022年4月より現職。主な競技経験はバスケットボール、野球、サッカー。