渡邊雄太がNBA2年目のシーズンに向けて始動「自分のコントロールできることに集中してやっていく」

及川卓磨 Takuma Oikawa

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5月5日、メンフィス・グリズリーズと2ウェイ契約を結ぶ渡邊雄太が、約2週間の日本滞在を終えてメンフィスへ出発した。NBA1年目となる2018-19シーズン終了後の4月下旬に一時帰国すると、トレーニングの合間にテレビ出演、スポンサー契約発表、バスケットボールクリニック参加、Bリーグ観戦など、多忙な毎日を過ごした。成田空港からの出国直前にメディアの囲み取材に応じた渡邊が、日本での短期滞在、プロ2年目のシーズンに向けた抱負などについて語った。

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「NBAに出たからといって一切満足もしていない」

約2週間という短い滞在中、様々なイベントに引っ張りだこ状態だった渡邊は「毎日忙しくて、ある意味、休む時間はほとんどなかった」としつつも、「実家に帰って家族や友人たちと過ごした時間というのは、自分にとって楽しかった。向こうにいると普段会うことはなかなかできないので、それは本当に楽しい時間でした」と、リラックスすることができたようだ。

また、日本では多くのメディアの取材を受け、ファンの声を直接聞くこともできた。それらは、これからの新たな戦いに向けてやる気を駆り立てられる要素になったという。

「こうしてたくさんの方々にお会いできて、たくさんの取材もさせていただいてありがたいなと思いました。メディアの方々にもたくさん取り上げてもらえたので、また今後、しっかり頑張っていかなきゃいけない。街で声をかけていただいて『いつも応援しています』とか言ってもらえると、自分にとっても力になりますし、もっと頑張らなきゃいけないなという気持ちになる。声をかけていただくのはとてもありがたかったです」。

メンフィス到着後は、翌日からすぐにチームの若手選手とともに自主トレーニングを開始する予定だ。再びチャレンジの日々に戻ることについては「小さいときからひたすら努力してここまで来た。昨シーズン、NBAに出たからといって一切満足もしていない」と、さらなる高みを目指す心づもりだ。

「より高いモチベーションを持って、一日一日を大事にして生活していければと思っています」。

 

NBA2年目の課題

2年目となる来シーズンへ向けての課題は、1年目に感じた体格の差を埋めることとシュート力の向上だという。グリズリーズで15試合(平均2.6得点、2.1リバウンド、0.5アシスト)、NBA Gリーグのメンフィス・ハッスルで33試合(平均14.1得点、7.3リバウンド、2.8アシスト)に出場した1年目の自らの出来に、危機感を持っていることも自覚している。

「昨シーズン、体格の差というか、フィジカルの差をすごく感じたので、そこは継続的に強くしていかなくてはいけない。それと、シュート力はもっと上げないといけないと昨シーズンを通して思ったので、そのふたつはまず重点的にやっていけたらと思っています。とにかく一日一日を大切にして眼の前のことに集中してやっていけば絶対成長につながると思う。当然、来シーズンは、今シーズンみたいなことをしていればこの先(NBAで)生きていけないと思っているので、もっと成長した姿を皆さんにお見せできればと思っています」。

「自信はあります」。

「チームの中心選手として試合に出るようになって、チームをプレイオフに導けるような、そんな選手になれたら」

グリズリーズは、昨シーズン終了直後に選手人事の責任者だったクリス・ウォレスGMが選手スカウトに異動になり、新たなにリッチ・チョーを執行部戦略担当に、グレン・グランウォルドを執行部シニアアドバイザーに迎えるなどフロント陣を刷新。それと同時に、J.B.・ビッカースタッフ・ヘッドコーチが更迭され、いまだ新指揮官は決まっていない。渡邊自身の将来にも関わってくる動きだったが、渡邊はそれに関して「自分がコントロールできることではない」とし、自らのやるべきことに集中するだけだと語る。

「僕ら選手も彼(ビッカースタッフHC)が解雇されることは知らなかった。(シーズン終了後の)選手とのミーティングが解散した後に解雇されたので、まだ(新たな首脳陣とは)会って話とかはしていません」。

「そこに関しては自分がコントロールできることではない。GMとかコーチが代わるというのはNBAでは頻繁にあることですし、自分がどうのこうのできることではない。とにかく自分のベストな状態を維持して、常に、毎日成長して、自分が成長した姿をコーチ陣やフロント陣に見せれば、絶対に来年も僕をグリズリーズの選手として起用してくれると思うので、自分のコントロールできることに集中してやっていければと思っています」。

現在、NBAはプレイオフ真っ只中だ。「ライブではあまり観ることができていない」という渡邊だが、近い将来、自らがその舞台に立つイメージは湧いてきているようだ。

「昨シーズンのグリズリーズは残念ながらプレイオフに入れるようなチームではなかったので、やっぱり僕がもっと試合に出られるようになりたい。チームの中心選手として試合に出るようになって、チームをプレイオフに導けるような、そんな選手になれたらいいなと思っています」。

2019-20シーズンのNBA開幕は10月、その前にはNBAサマーリーグ(7月)や、FIBAワールドカップ(8~9月)が控えている。それらすべてが、自らの成長につながる機会になることを渡邊は百も承知している。さらなる飛躍を誓う渡邊のプロ2年目のシーズンが今、始まる。


及川卓磨 Takuma Oikawa

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スポーティングニュース日本版編集長。千葉県生まれ、茨城県育ち。2000年日本大学卒。大学在学時を含めて丸14年間バスケットボール専門誌の編集者として企画立案・取材・執筆・編集・誌面制作・マルチメディア運営等に携わる。2013年秋にNBA日本公式ウェブサイト『NBA Japan』編集長就任。サイトやNBA日本公式ソーシャルメディアの新規開設に携わると同時にメディア運営を主導。2022年4月より現職。主な競技経験はバスケットボール、野球、サッカー。